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本のことを書いてあるブログ

斜陽(太宰治)それからsongsのこと

斜陽/太宰治

 

まんがで読破にて読了。以下、ねたばれあり…というか、内容のまとめ。

 

貴族という身分がなくなりつつある時代の、その貴族の女性、母親、戦地から帰り、麻薬中毒を経た弟との暮らしと、母親が病で伏せていくなか退廃していく様子を描いた小説でした。

 

母親と娘の関係性の中に蛇が何度か出てきます。強迫観念のような、暮らしや自らの生に対しても恐れを覚えるような、繊細な感覚で物語は紡がれてゆきます。母親と娘の関係は強固で、娘は母親を慕っており、尊敬もしている。病で衰弱していく親の手を見て「あんな手は、母様の手ではない」と愛情あまって言うくだりは、自分にはない感情のように思えました。強固な家族の繋がり、それはまるで幼児と絶対的な支配者(あるいは、救いとなるもの)の盲目な繋がりにも感じられ、それに対して、「ああ、こんな関係性もあるのか…」と思いました。

 

太宰治の作品は敬遠していたところもあるのですが、こうやって女性という形で通して見ると何故だか受け入れられると不思議と思います。

 

そして、その娘は弟の師でもある、ある小説家の男性に、ほぼ一方的な恋愛の感情を抱き、母親が息を引き取った後でその子どもを産むことをゆいいつの道しるべと見いだし、押しかけるのです。

「一方的な…」と書きましたが、それは弟の借金の用事で家を訪れた時、外に出て不意にキスされたというだけの事だった。それだけで、娘は手紙を送り、それからその相手の子どもを産みたいという気持ちを募らせていきます。この辺の思い込み部分はある意味で怖いものがある。

 

で、その小説家のもとに押しかけるのですが、現在は退廃的な生活を送り、アルコール漬けと病のために以前とは見違えています。そして、小説を書くこともしていない様子。使い尽くされた表現に意味を見出せず、取り巻きに騒ぎ立てられるのみの生活。すべてがむなしい、悲しい、そう言いながらも、二人は結ばれて、娘にはその後、思っていた通りの子どもが授かります。

 

その一方で、弟は報われない恋、それと現状に希望を見出すことが出来ずに自殺してしまう。一方で、娘は子どもを産み育てることに意義を見出し、生きていこうとする…という終わり方でした。

 

感想

 

印象は、登場人物が皆繊細だということ。たとえば娘が小説家の元へ駆けつけたくだりでは、その奥さんと子どもから傷の手当てを受け、その上夫の居る場所を教えてもらい、それから小説家のいる居酒屋では弟と小説家の悪口を聞き、何かわからんが待たされる…それを娘は「このうえもなく虚しい時間にいる」(ちょっと違うかもしれませんが)と表現しています。

たとえば蛇の場面もそうですがこういった、自己の欲求に対する原罪へと通じるような場面がこの作品では多く見られます。それは単に自分と世界の矮小さを描いているのではなく、人間という在り方に付き物の「何か」な気がして、生きようとすること、生き続けることに単純でない厚みとして両側面から見せてくれるという感じがして、読み応えがありました。娘は、母親が死んだ時に「生きることは汚く、死ぬことは美しい」と感じます。こういったことはすべての人が、色々な機会に感じてしまうものなのかもしれません。そうだ、わたしもこういうことを感じているのかもしれないけど、多分こういったことを書こうと思う、思わないには大きな溝が存在するのでしょう。

 

弟も、日常的に遊びまわりますがそれは自身の虚しさを紛らわすための行為で、決して毎回楽しくはなかった、自分は快楽に対するインポテンツなのかもしれない…ということを、姉への手紙へ向けて書いています。何かそれが太宰治の感情に裏付けされたもののようなリアルさがあり、自分とは違う感じ方にまでも共感を覚えるというか「斜陽」は興味深い小説でした。

 

太宰読んでみよう!

 

 

songs/サカナクション

 

今日、出ていて「新宝島」「グッドバイ」「忘れられないの」を歌い、それからナビゲーターの大泉洋との寿司屋での対談もしていました。

家で、何故かビデオのリモコンが見つからず、うちのテレビにへばりついて見ることに。

 

やっぱり、「忘れられないの」良いですね。対談では、山口さんが作詞で悩んでいて、松任谷由実さんことユーミンからの助言を得たという話もしていたりしました。ユーミン…!

「忘れられないの」に関してか、山口さんが「ポップスを作りたい」と感じていたようでした。

作る苦しみがありつつ、けどプロってちゃんと毎回それを九割以上の点で成功してきてるからこそ「プロ」って名乗っているんだな…って思う。

 

わたし的には「作為と無作為」の話をいまいちよく分かっていなかったところがあったので今回なるほど!も思ったという感じです。「MUSIC」だったりアップテンポの売れそうな曲を作らなければならないというような葛藤と、もっと無骨でも自分達の精神性に沿った、たとえば「グッドバイ」のような曲を作りたいという気持ちがあるのだそうです。「無作為で作ることに対する憧れ」に対して尾崎豊などの名前を挙げていて、その辺は「つくる」に伴う葛藤や、周りの人の中で自分らしくあることの難しさなど、自分の心境と重なる部分があって興味深かったです。※ハイク…タンカ…

 

「つくる」はなかなか大変なことですよね。プロの人や第一線の人でも同じような葛藤があるという話を最近他の本でも読んだりしたのですが、なかなか貴重な体験談だなあと思います。