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本のことを書いてあるブログ

あこがれの鼻血/さくらももこ

ちびまる子ちゃんの作者さくらももこの書いた漫画に「あこがれの鼻血」というのがあった。健康優良児の主人公(たぶん作者)が、幼稚園で鼻血を出す同じ組の子を見て「うらやましい…」とひそかにあこがれを感じ続ける、というお話。体の弱い子、それから姉が鼻血をだすたびに周りの人は心配して、かいがいしくお世話されるのさえもうらやましい。あこがれ続けていた鼻血は、ある日作者の身に唐突に訪れるのだけど、たまたま家族中の人たちが外出していたときで、鼻血の量もとてつもなかったため誰にも心配もされない、ただ怖いだけの体験に終わってしまった…という内容でした。

 

自分もなんとなくでだけどこんなふうに自分のもっていない、けど言ったって誰にも理解されえない物に対する密かな郷愁、でもないけど何かもっと湿っぽい、陶酔に似た感情…みたいなものがあると思う。例えばブランコ触ったあとの手の匂いをいつまでも嗅ぎ続けるとか、大人になっても練り消しみたいなものをこそこそと集めてたりするだとか。さくらももこの作品にはそういった何か共通理解を必要とする以前の感情をくみ取って描いてくれているところがある。うちの姉も「ちびまる子ちゃんのさ〜、夏休みがこれから始まるゾっていうなんてことのない感じの話面白かったよね」と言っていたけどそんな感じ。

 

わたしも鼻血は出ない方だった。でも出る子は不思議と出る。普通は鼻の穴かっちゃいたとかぶつけたとかの衝撃で出るものだと思ってるけど、そんなのもなく寝起きに鼻血出るとか話してて急にもぞもぞしてると思ったら鼻血出てるだとかするので驚く。(本人はもっと驚いてるのかもしれないが)

わたしも一度だけなんの前触れなく鼻血が出たことがある。中学生くらいの頃だったか、鼻水がそろそろ垂れそうだなと思って、けど漫画かなにか読んでて鼻噛むのを先延ばしたうえで、耐えかねてティッシュを取り出して思い切り鼻、噛んだらティッシュに付いたそれが全部鼻血だった、ってことがあって、あのときはギョッとした。鼻水だったらある意味、生理食塩水てきな水分みたいなイメージで、体から出たり入ったりしてても気にも留めないようなものを、わたしはこんな真っ赤な血をさっきからずっと入り口付近でずるずるやっていたとは…!しかもそれを、力任せにかんだとは…!って思った。

痛みをともなわず出るサラッとした鼻血って怖いですよね。死が音もなく近付いて来てるみたいで。

 

あとは夏、鼻血だしやすい友達がいたんだけど授業中に「鼻血が出たので、拭いて来ます」みたいなことを言って出ていくということがあったんだけど、その夏はそういう退出がやけに多く立て続けに3人くらい鼻血で出て行ったりなどすることがあった。鼻血ってうつるんだろうかと思った。