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本のことを書いてあるブログ

最近読んだ本まとめです1217

こんにちは。溜まってきたため、ひさしぶりに、読んだ本のまとめを書いてみます。

R帝国

R帝国

R帝国


中村作品を読んできた方、この本の近未来の設定にすこし驚きませんでしたか?物語は戦争のはじまりから描かれています。そこで出てくる、怪しげな二足歩行の兵器や、主人公たちが片時も離さずに持ち歩くHPと呼ばれる人格内臓の携帯機器、現代人が何処かで経験したことのあるようなネット、マスメディアが情報を操作する社会の裏側、記憶を消す薬…などがさまざまな中二感くすぐるようなアイテムが出てきますが、それをめぐる人を通して、その心象の内部まで食い込むように描かれています。中村さんの作品はなんというかたたみかけるような文章で感情に迫ってくるような感じがあるため、いつも読み終えるのがもどかしいままに最後まで読み切らされます。
情報化社会の中に生きていると、その中に埋もれているということさえも知覚することはあやふやだったりしてつい、スマートフォン…とか例えばあとは改札をくぐる…みたいななんてことのない動作、はしょって書いてしまうのが自分なのですが、そういう見ていない部分、それから人の裏の裏まで、そういえば、「ある」なと思うようなことが描かれていて、それが新鮮でした。それはひいては多分作者自身の解釈としてあるのだなということと、ここまで書ききるというのはなかなか難しいだろうなと。ひとつの心象がひとつの言葉や人では到底描ききれない、そこまで描き切られていないなというもどかしさみたいなものは人の作品を読むごとにあり、なんていうかその心理や真実というものの持つパラドックスの性質というか人として誰しもが持つ矛盾をまた別の人から暴かれるような真理がここまで書いてある事は、多分作者がすべて(自分の決断においても)に対して疑う余地を外していないが故で、こういうのは小説家の目線なのだなと感じつつ読んでいました。
HPという端末はこの中の設定で人格があり、それも設定した恋人の声で主人公へ語りかけてきたり新たな人格を持ったりしこの物語のアイテムとしては重要な部分を占めています。そういうあたらしい設定はこれまでの作品であまり見られなかったモロに近未来、少年〜青年がわくわくするようなベタな設定でもあって、わたしも中村さんて中二ぽいよなと思いつつも中二感突き抜けるような少し際どい感じもあったのですがきちんとこれまでの作品の雰囲気と地続きでぶれずに描き切っている感じがしました。



夢幻花

夢幻花(むげんばな) (PHP文芸文庫)

夢幻花(むげんばな) (PHP文芸文庫)


幻と言われている黄色いアサガオには、その幻であるいわくと理由があった…そのアサガオを巡ってさまざまな人の「いま」が交差し合うという物語。東野圭吾さんの作品にはさまざまな伏線が張り巡らされていて、ところどころに謎が配置されているのが読み進めていく上で明らかになっていく、という感じなのですがこちらもそんな感じで読み終わりました。物語が始まるのが家族が昔から訪れていたアサガオ市で、そこで出会った女性との思い出と事件が交差していく、という様がこの作品のうつくしさでキモなのだなと思います。初恋の女性、というのはやはり誰からみても微笑ましく思い出深いものでもあるのかもしれません。花をめぐって交差するのはそれぞれの欲求、だったり不安もありますし使命感も人びとの動き方を決めるわけですが、物語の中で不自然ではなく配置されている謎解きが、それが解かれていくときは壮大なものではなくて「え、こんなことだったんだ!」とそれがいつも人のちょっとしたうかつさから解けていくのがああ、ひとなんだよな、ひとがいるから物事が動くんだよなと思わされる、東野作品の謎解きの面白さだなあと思います。



僕を殺した女

僕を殺した女 (新潮文庫)

僕を殺した女 (新潮文庫)

  • 作者:北川 歩実
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/06/30
  • メディア: 文庫


こちらもまさにたたみかけるような文章で、ある日目覚めると男だった自分の体が女性に変わってしまい、そして見知らぬ男の家にいる…さらには、見知らぬ女から全力で追いかけられる…という謎ばかり、謎極まれる設定の中物語を読み進めさせられるのですが、文章の印象がこちらに迫ってくるように切実なためまるで自分がその中に入り込んでしまったようなリアルさを感じます。まだ読み終えてないんですが…中で出てくる人びと、家族、精神病院にいる姉なんかも個性的でなんていうか詩のようなまとまりがあり、謎でいながらもこだわりが見受けられます。妙なリアルさがあります。



エイジハラスメント

エイジハラスメント (幻冬舎文庫)

エイジハラスメント (幻冬舎文庫)


内館牧子さんのその名の通り「エイジハラスメント」について書かれた作品。

こちらでツイートしたのですが…これでもか!というほどに女というものの綺麗か否か、年取ってるか若いかについて描かれている作品でした。この事について、つまり美醜だったり若いか老いてるか、どちらが肉体的にも単純な、モノとして優れているのか…まずそれが視野に全く上がってこないないと言い切れるひとなどいない、と言って良いでしょう。でもわたしは、内心浮かんでいるから言ってそれが事実と見做されるのとはかけ離れていると感じるし、やはり小説はもしもの体験としてあるのかなあという感じがします。が、実際にハラスメントと呼ばれるものはその場からは逃げられない状態に陥ることで本人に注がれるような性質のものだと思うのですが、エイジハラスメントもそんな感じで周囲からのなんてことのない無意識の態度だったり、職場内や不倫などでその場にいなくてはならない人が強いられ、会えて比較されることで湧いてくるようなハラスメントなのだなと感じられます。主人公は、わたしたちが普段取る選択よりも、より極端に走りがちなためにちょっとハラハラ、さらには苛々しながら読む部分も多くあります。最後に、「人の心はどうあがいても変わってしまえばもう引き留められないんだ」と気付いた蜜は、あんなに願っていたアンチエイジングを辞める決断をするのですが、「いやそれ、もっと早くにも決断出来るし!」とは思った。つまり、大いに悩めることが小説を形づくるのでもある…作者がそれを、考えてはいなかったとは思いませんが。
けどこの加齢という現象、どれだけ楽しくても誤魔化して生きていても迫って来るというのは事実で、それは、ええ、恐怖ですよね。年取るんが怖いんじゃない。年取る時はなんか自分だけが年取ってるような気がしてる。年取ることで、どう、何が変質していくのかを如実に考えんのが怖い、みたいな。だから事実でもあるんです。この小説は、どういう立場の女性が読んだとしても身につまされるものはあるのかもしれない…辛い事は早めに体験しておく的に、読んでみるのは良い経験…かも?
内館牧子さんの小説はこんなふうに人に女に厳しめに食い込んでくるものが多そうなイメージ。他のもいずれ読んでみたいです。




闇の歯車

闇の歯車 (文春文庫)

闇の歯車 (文春文庫)


こちら、「たたみかけるような文体」という解説文が気になり読んでみました。時代劇の設定、良いですよね。わたしは好きなのですが、グッと来て泣かされる、みたいなものは今回は無かったのですが、ハードボイルドな設定が効いている作品だったと思います。それから悪役の立ち回りが面白く、それが暴かれていく様も人間というものの情けなさ、たくましさを見ているようで楽しめる一冊でした。男の人が好きそうな作品。




以下、これから読む本

以下、まだ手を付けていないけれど読む本…



ディスカスの飼い方

ディスカスの飼い方 (幻冬舎文庫)

ディスカスの飼い方 (幻冬舎文庫)


この間ツイートをしたけど、まだ読んでいない。出だしは「村上春樹」を彷彿とさせるものがあった。



色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年


こちらもツイートをしたのにまだ読んでいません。
読んでいない、とひとくちには言うけどもう、全く読む気がないわけではなく、読む気はまんまんなのにまだページは開けないという状態です。



本朝金瓶梅

本朝金瓶梅 (文春文庫)

本朝金瓶梅 (文春文庫)


林真理子さんの時代小説、ちらっと見てみたら古本屋でまだ発売されたばかりの日付だったため、ラッキーとばかりに購入。いろいろ読むに付けて林さんは本当にいろんなことを楽しんでしまうの方にベクトルを合わせて生きている方だなと感じつつ、そんな風な人が近くに一人でもいたら楽しいだろうな…みたいな全然内容とは関係ないことをわたしは考えていた。



もっと厭な物語

もっと厭な物語 (文春文庫)

もっと厭な物語 (文春文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 文庫


アンソロジーを買おうと思ってウロウロしていて、恋愛ものはそれほど読みたくない…家族ものも、それほど…古すぎるものも、ウーン…みたいな感じで消去法でこの本を手に取った。外国の作家さんばかりですが今のところ楽しく読めています。