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本のことを書いてあるブログ

萩尾望都「残酷な神が支配する」を読みました

今日はこちらを読みました。

残酷な神が支配する (3) (小学館文庫)

残酷な神が支配する (3) (小学館文庫)


萩尾望都さんの漫画は一時期姉がハマっていた影響でトーマの心臓、半神などを読んだことがありますがこちらは初めて。
こちらの漫画を知ったのは

この本でした。

わたしが買えたのは文庫版の3、4巻なため冒頭が分かっていないのですが(調べてみたところ10巻くらいまで出ていました。)

この巻では義父から性的虐待を受けるジェルミが、最愛の母サンドラや義理の兄弟イアン、さらには前妻(多分)や前妻の子などの中で誰にも言えない、言ってしまったら尊厳や身が裂かれてしまうかのような壮絶なモラルハラスメント性的虐待について、たった一人で悩み葛藤しながら生きている状態です。
たった一人…その恐ろしさが萩尾望都さんの表現により、見えて来ます。それは、表現する言葉を持たない感情。負けた側は、言葉を持たないのが摂理、などあらゆる虐待に対してなぜ人が言葉を持たなくなるのか、それは他人から「あなたは一人なのだ」という感覚をもたらされることによることがよく分かります。

性的虐待のシーンは重く、ジェルミが日常のなかで心神喪失するかのような描写もとてもリアルです。それから、怒りを溜め込み、爆発させるシーンも真にせまってきます。
ジェルミが義父に性的虐待を受けるシーンは繰り返し出てきますが、こう言ってはなんですがややファンタスティックな、創作の領域を感じる部分もあり、少女漫画というテーマと絶妙にはまっています。こういう本は後日語り合うみたいのが盛り上がりそうです。牡丹と薔薇みたいに…(みてないけど)快か不快か、について言えば、わたしの場合は、何も気にせずに知らないと言うことと、何も気にせずに知ってると言いまくることの方がずっと暴力的で、明るいテーブルに載せられる議論の方法を、これからは学ぶべきなのかもしれないなあと思ったりします。

全体的に少女漫画という土俵と題材と、細かで迫力ある心理描写が合わさってこれ以上はないと思えるような表現になっています。あらためて「日本の漫画がスゴい…」と思わされました。
トーマの心臓を読んだときは学生だった為テーマがあまり理解できなかったのと、なんで、外国なんだろう?というのがあったのですが違和感などはありませんでした。
あっスゴいって言ってますね。

なによりもジェルミの心理描写がすばらしいです。小説でもここまで書かれているのはなかなかないのでは。
軽い感覚で書いているような感想になってしまいましたが実際読んでる間はずっとジェルミに対する涙止まらず。四巻の裏切りのような展開に驚くばかり、、、、
ヤバイ、、、、、
でも読み終わってからはきちんと現実に向き合える感覚がしました。…エンターテイメントとひとくちには言いますが、作者の努力に対して感謝をしたくなります。



最近ずっと、小説を読んでいて溜め込んでいた不満があったのですが、こちらを読んで吹き飛ばされたような気がしています。その不満、というのは、おそらく、結局は中の物語すべてが作者の方にベクトルが向いているのではないかということで、このことについては一昨年くらいにも感じてたのですが。
要か不要かくらい、見てて分かりますよね。


まあそんな感じで、ただただ素直にあらゆる感情体験をした感覚でした。
次巻も即購入しました。