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本のことを書いてあるブログ

増強版 いちばんわかりやすい俳句歳時記/辻桃子・安部元気

増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記

 

「青麦」

 

突然ですが、これを見て一体どう感じるでしょうか。

わたしは文字をじっと見つめていると、その向こう、というか実際見ているのはわたしたちの目なので、その目の裏に「青い麦の葉っぱ」の映像が見えてくるような気がする。

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こんなふうに。

「いちばんわかりやすい俳句歳時記」には俳句を作るときに必要な季語が季節、種類別に載せられていて、またその季語を使った有名な俳句も引用されています。

青麦であれば、

 

青麦や火の見しづかに村はづれ/長谷川素通

 

百姓の血筋の吾に麦青む/高野素十

 

青麦や讃岐の国は汽車ゆるく/平田翠

 

この三句があげられています。

俳句を見る、読むのも楽しいのですがこの季語の意味を読んでいるだけで面白い発見がたくさんある。三十ン年生きてきて、「春大根」の意味も知らずに生きていたのか…など、わたしの無知まるだしではありますが、日本語は調べるほど奥が深くおもしろみがありますし、そのひとつひとつが日本の繊細な風土を表しています。もしかするとこれ、小学校の必修科目にしてもよいのでは。

「クレソン」

こういう字体を見ていくうちに「使ってみたいなあ」というのが出てきます。わたしはカタカナ語がどうしても好きな傾向がある。短歌の岡井隆も「カタカナ語を使うひそやかな楽しみ」について書かれていました。

チャレンジでもありますね。

「夏めく」

夏めく。あたりが夏らしくなってくること。春の花が終わり、草木が緑一色となる。

 

複雑な漢字もよいけど、やはり使い慣れた字体が珍しく使われてたりすると「おっ」と思うのかもしれない。

 

夏めきて人顔見ゆるゆふべかな/成美

 

俳句の印象ですが、「わたし」などの主語が入っていないのに、とても人間らしい部分が入れこまれていると感じます。

感情が引っ張られる感じがしなく、すっきりと言葉のよい切れ味を味わえる部分も良いのかもしれない。

短歌はわりと人生、感情、恋愛なんかを詠むことが多いのです。

 

「土筆」

 

「つくし」です。こんな字を書くのか。多分、目にしたことくらいはあると思うけれど、書けないと思う。何かかわいい。

モグラっぽい。

土竜

もぐらはこうでした。「土竜の唄の、もぐらだな」みたいな。

 

 

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すみません。

 

固まつて土筆摘みをりつくし組/石井渓風

 

目に情景が浮かんでくるような一句。

句の中にユーモアもあり、短い言葉の中に作者のたたずまいも伺うことができます。

 

増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記

増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記

 

 

これを書いていて思い出したのですが、昔読んだ特別な支援を必要とする子ども達の学校で、輪になって座り、目を閉じて、一人一人がお話をしていくというのがありました。皆一人一人は話す番が来た子の言葉しか聞こえなく、そのお話の想像を一緒にします。例えば誰かが宇宙船の話をしたら皆が宇宙船へ一緒に行き、海の中であれば海へ行き、話に口を出しても良いのだった気がする。そういう空想を一人ではなくて皆で分かち合う、という授業。なんか、良いですよね。

 

「イメージする」はたらきというのはそんなふうに培っていくものなのかもしれません。言葉はおもしろい。