喰ったらヤバいいきもの/平坂寛さん、とは…
生物ライターの平坂さん、わたしが初めてみたのは有吉のダレトク?!で、食べれるのかどうか不明な生き物を捕まえていた姿でした。
本を読んでみたところ、琉球大学理学部海洋自然科学科という大学を出ており、生物に関しての知識もあるれっきとしたライターの方でした。(調べてみたところモンスターズ株式会社取締役。 琉球大学理学部海洋自然科学科卒業。筑波大学大学院生命環境科学研究科環境科学専攻博士前期課程修了。 という肩書きが…)
文中でも生物に対する愛が溢れていて、平坂さんを動かす原動力はあたかもさかなクンのような探究心、それから未知のものを知りたいという知的好奇心であることが伝わってきた。
知りたいがゆえに
それにしても毒針を刺してみたり、「とにかく脳が拒絶するような、気持ちの悪いものを食べてみたい。全身で感じたい」という感覚はわかるような…いや、わからないような…毒針に関してはちょっとマゾヒスティックな感じがしてしまったわたしだった。
(平坂さんは決して無謀な行為をお勧めしてはいませんが)
中に出てくる生き物は、オオカミウオ、デンキウナギ、グリーンイグアナ、タスマニアンキングクラブ、オニヒトデ、ソウシハギ、ガーパイク、ヨツメウオ、バラムツ、フナクイムシ、クラリアス、オオゲジ……
(amazon喰ったらヤバい生き物解説より)
たとえば「アルミニウムを噛んだ時のような電気の味」、「沼臭」、「果てしない水っぽさ」、「オオゲジを愛するがゆえに、たべてしまいたい」などなど。
採った魚を焼くコンロがホテルにない為100円ライターで焼いて食べる、みたいな料理に苦戦する記述も面白い。
そんなにグロくはないですが、オオカミウオのフォルムに「うっ」となる人にはおすすめできないかも。
けど、知りたい…愛着がある…それが「食べたい」に変換されるってあるんですね。わたしは子どもを見ていて「かわいい!子どもにとぐろ巻かれたい!」みたいなことは、考えたことはありますが。
「牛、ブタ」とかにも興味があればそうなるんだろうか…
わたしがなるほどと感じたことは生物というのはまるで変換装置のようだなあということ。生物という細胞膜を隔てた向こうには宇宙があるごとく、たとえば虫であれば虫(それも、イモ、マメ系と、カニ、海老系統の2タイプ分けられるらしい…)なりの仕組みで、独特に進化した体皮の中、彼らは価値を変換しているようにも見える。そういった秘密を知覚したあとで、食べられる形にまた調理する。これは人間にしかできません。
生物の成り立ちというのは「まったくワケワカラナイ!でも、おもしろー!」なものなんだなあと思う。論理というのは、まずそれに興味を持つ人が追求をやめられなくなり、それにびっくりさせられ、体感して、そうした後で作り上げていく血肉のようなものでもあるのかも知れない。ここに出てくるキモこわい生物は、人間の考え方と照らしあわせようとすると規格外になるのですが、向こうの世界の視点を得たあとでは、それが当たり前のようでもあり。わたしたち人間の悩みの部分なんてごく一部だと思えてしまう。
あとは、中国のドブ河川にある魚は、もともとおいしく食べられる魚であってもドブの味がするらしく、それから、果物などを主食にしているイグアナはめちゃくちゃ肉質がいい、など、肉質ってやっぱ生き物が食べるもの、取り入れているものがダイレクトに響いて来るんだなということが読んでいて分かった。外界にあるものをその体で生物は吸収し、体現させられている。
最後のシメがだいたい「まずかった…!」「めっちゃ、臭かった…!」で終わってたりしますが、おいしく食べるが目的ではないのでなるほどという感じ。
面白かったです。