こんにちは(⊃´▿` )⊃
アイヌの人達はこういった物語を文字に書き起こすのではなく伝承で伝え、またそれを暗記し伝えることで残して来たそうです。
今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人々の歴史と文化 (サンエイ新書)
- 発売日: 2018/05/10
- メディア: 単行本
こちらの本を読んでから、知里さんの残したこの本が気になって居ました。
「銀の滴降る降るまわりに、
金の滴降る降るまわりに」
という歌を歌いながらゆっくりと大空に私は輪をえがいていました
それを見ると私の持っている悪い心がむらむらと出て来ました
軽い足取りで腰やわらかにかけまわり、
重い調子で木片がポキリポキリと折れる様にパウ、パウと叫び
暴風の魔を声援するのみに精を出しました
昼でも夜でも生きたり死んだり、している中に、どうしたかわからなくなりました
ふと気がついて見ると、
大きな黒狐の耳と耳との間に私は居りました
先に来た者は、それと見るや
魚がクルリとあとへかえる様に引っかえして顔色の悪い男の
わきの下をくぐりずーっと逃げてしまった
一部紹介させていただきました(※こちらそれぞれ別の物語です)がこんな風に、物語はオノマトペをたくさん使いながら、流れるような文体で語られてゆきます。
アイヌの人たちが焦点を当てる、よいものと悪いもの、それから美しいもの、神やそれと並ぶものがこちらの物語から読み取れます。
多分物語としては日本昔ばなしとも少し意味が似ているのかも知れないです。そういえば、わたしも小さい頃毎週見てました。あれを見てると悪いことをすれば誰かが見ていなくてもいずれバチが当たるだとか、因果応報でよいこと、悪いことはまわってやって来るという感覚が身につきますよね。今の子ども達はどんなふうに考えているのだろう、、、。
日本人はお地蔵さまやあちこちに宿る八百万の神さまを恐れたりうやまったりする物語を持っていると思いますが、アイヌの精神性が独特なのは神が動物や自然物からつくりだされた道具類にも宿るということ、それから神が近くに生活し心を働かせているような感覚があるところだと思います。願ったり祈ったり、折々の儀式で求める以前より、もっと近く、生活に即してにいるのがカムイなのですね。
北海道という寒冷地はなかなか農耕に適さなかったため、アイヌの人たちの生活は狩りに密接していました。その為こんなふうに動物と精神性を交流させるような精神が見られるのかも知れません。古事記でも神様は登場したりしますが、アイヌのカムイは動物にも宿り、動物自身もふだんは人間と同じ姿で生活していると考えられているようです。(動物たちは人間のいる場に出て来る時に冑を被って動物の姿で来るのだそう!)
この物語の中でカムイは人間のような心をもち、そこに人間のような生活があります。人間は狩を行ない、食べるための動物を捕らえますが、そうするごとに人間はうつくしいイナウをつくり、神に酒を捧げます。そうして人間は神に感謝し、神もその贈り物に感謝することでこころの交流を行います。この辺りはアイヌの大切な精神性のような気がしました。
読んでいて、現実と夢を行き来しているような不思議な感覚になってきます。それから、文章のうつくしさ(⊃´▿` )⊃…
口頭伝承だからこそのなめらかさ、それから音のなじみやすさがあるのかもしれませんが、とても面白いです。
中に繰り返し語られる「悪さをしないように」という結びも、つまり→自分の取り分以上を無下に取らない→子々孫々で損をし、代々貧しさがつづくのだから、おまえたちはおやめなさいと教える。など物語が結ばれてるところから見て、何かこれが長期にわたってわたしたちがやっと知る自然の摂理だったり、教育で知る動植物のサイクルのことわりにかなっているように見えますね。大きな声では言えないですが無理をするとそこから人間も蝕むような伝染病が発生するということも知られていると思います。こういった、利益を追求しつづける、の対極にあるような自然との折り合い、死生観についてはもっとたくさん考えてみても良いような気がします。
そこで生活していると聞こえてくる声が本当にあるのかも知れないと思えて来ますね。
とはいえ、アイヌの人たちの精神がこのような物語に込められ、ずっと伝えられて来たということを知ることが出来ました!
ヤマケイ文庫 アイヌと神々の物語~炉端で聞いたウウェペケレ~
- 作者:萱野 茂
- 発売日: 2020/03/16
- メディア: 文庫
こちらも気になります。
アイヌの人たちの生活や文化にもっと興味が湧いて来ますね。