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本のことを書いてあるブログ

達×達ー養老孟司×山下洋輔を観ました

昨日、NHKで再放送されていた達×達での養老孟司さんと山下洋輔さんとの対談を観ました。まず、山本さんの職業であるジャズ、音楽についての話。日本語や音がイメージを帯びて広がっていく様子を語り、その場でなんと「養老孟司」という名前の連なりからも一曲作ってしまう山本さん。「与えられたテーマがあるのなら、なんでも自分は作ってしまう。作ろうとする」んだそうで、養老さんはそれに対して「それが、創作ですね」と答える。好きなことを、自分で好きだと決め、あらゆる反発の中でも自分でまた言い切る、その繰り返しで、好きなことを職業にできていることに感謝を感じながら、のちの対談で人生は、人によってもたらされていると感じていると語っていました。養老さんも、うなづきながら、けど好きと言っても、好きなことだけやっているのではないですよね、と言い和む場。養老さんは虫が好きなことで有名ですが、時間も忘れて虫の研究に没頭し、文を書いたり調べたりなどしているようで「実はこんなことしているよりも早く虫のことを考えたいと思ってることもある」とおっしゃっていました。好きなことに理由はない、理由なんてないけどとにかくやりたくてやっているのに分かってない人も多い…だとか。
好きなことをしている人って本当表情が生き生きとしてますよね。山下さんも人柄が柔らかで笑顔が素敵です。
それから次は養老孟司さんの別荘にての対談。主にバカの壁という著書を通して、養老さんの考えを山下さんが訪ねて行く形なのですが終始、なごやか…楽しそうでした。
バカの壁についても紹介されていて、わたしはきちんと覚えていなかったと思った。また読まなくては。
養老さんは教員として生徒に教えていたこともあり、本では厳しそうな表現もありますが、人と人との間にいた人らしく柔軟、柔和な語りかたで、二人の話がだんだん乗ってくる様子が楽しかったです。それから、話し方も淀みないし生き生きとしていますよね…養老さんは「寿命が」みたいなことをおっしゃってましたが見ているこちらからは何度も働きざかりのお二人が話されている風に見えていました。年齢、っていうのは実感と循環なんだなあとつくづく感じたのでした。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)

  • 作者:養老孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/01
  • メディア: Kindle

「人間というものは、結局自分の脳に入ることしか理解できない」、これが著者の言うところの「バカの壁」であり、この概念を軸に戦争や犯罪、宗教、科学、教育、経済など世界を見渡し、縦横無尽に斬ったのが本書である。

養老さんは、この「壁」は教えてもらう側、教える側の両方にあるのだとおっしゃっていました。「人はわかりたくないことをシャットアウトしてしまう」。わかりたくないこと、それは死でもあります。普段わたしたちは生きるという死に対する抵抗力で現実を形作っているから、別世界のことを考えるために、かちかちと自分でチャンネルを変えないとすんなりこれは、入ってこないよなあと感じる思想もときどきはあるなあと感じた。
それから、音について、動物の世界で音とは何なのですか?と山下さんが質問されときに「音は一番後腐れがない。残らないから、伝達手段に適している」それから、もしそれが匂いだったらその場に残ってしまうけど、音であれば消えてしまうからいちばん処理に困らないのだとおっしゃっていました。動物行動学というのは、全部嘘だと思っている、とも…結局それは、生き残った側からの論理で、私たちの世界の都合ですからね、とのこと。こんなふうに内容では一刀両断はしますが、なんていうか語り口が飄々としているところが養老孟司さん的なのだなあ…というのと、それを質問し、聞く山下さんも「養老思想は一刀両断ですね」と言いつつも楽しそうに対談されていました。それにあとは「死」について、「解剖は怖くないのですか?」という質問に対して、死、というのは抽象的な概念で、私たちの前に来る死体は、「死」じゃない。「死」というのは、親しい人の死で、親しい人の死を、人は受け入れられない。信じようとしない。自分も、肉親の死を受け入れるまで、数十年かかったとおっしゃっていました。解剖を選んだ理由は最近読んだ著書からも知りましたが、自分のしたことが明確にあるから、なんだそうです。こんなふうに、次から次へと養老さんから明瞭な答えが返ってくることに山下さんも「養老思想は深く、味わい深い…!」と感嘆されていました。

NHK番組表